(1) 位置づけ
介護保険法第176条に基づき、介護保険が目的とするところの円滑な運用に資するため、国民健康保険団体連合会(以下、「国保連合会」という。)において、被保険者等からの苦情を受け付けます。
「運営基準」では、事業者は利用者の苦情に迅速かつ適切に対応すべきことが明示されています。
同じく、市町村が第一次的な苦情受付窓口として位置づけられています。
国保連合会が広域的対応が可能であること、並びに介護サービスにおいて第三者機関であること、審査支払業務を通じて、受給者及び事業者に関する情報を保有すること等の理由によって、国保連合会は介護保険法上の苦情処理機関として明確に位置づけられています。
「運営基準」においては国保連合会の事業者に対する指導・助言の権限がうたわれるとともに、平成15年度の改正において、指導・助言を受けた改善内容の(国保連合会への)報告義務が盛り込まれるなど、国保連合会の役割が再定義されました。
また、介護サービスが真に所期の効果をあげているか、不適正・不正な介護サービスはないかとの観点から、平成15年度より介護給付の適性化対策事業が本格的に起動し、介護苦情業務もその役割を担うことになっています。
(2) 意義
1. 権利擁護
介護サービスの利用者は、事業者に対して苦情を言いにくい立場の人が多いものであります。また、著しい過失があったとしても、指定基準に抵触するまでには至らないケースも見られます。本来は契約上のことでもあり、法的な解決が望ましいが、こうした法的な救済には時間もかかり、実際上は解決が難しいことも少なくありません。
本制度には、利用者を実質的に保護しようという権利擁護の考え方が第一にあります。
2. 介護サービスの質の維持・向上
介護保険制度の下では、介護サービスは一般のサービスと同じように利用者と事業者との契約によって成り立つことになりますが、その際、サービスの質を一定の水準に保つことが必要です。苦情処理は、このようにサービスの「質」のチェック機能として重要な役割を果たすことを期待されています。
3. 介護保険制度のサービス内容および介護費用の適正化
苦情処理の業務を通じて、介護保険制度が真に所期の目的を達成しているか、不適正・不正な介護サービスが提供されていないか、といったチェックもなされることになり、介護保険制度全体の安定に資するものであります。
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